3月18日「メディケア・リハビリ訪問看護ステーション京都」で第2回目の地域講座を開催しました。
今回のテーマは「トロミの体験 ~おいしいトロミを味わいながら~」ということで、食べること・飲むことに障害をお持ちの方に、いかにして食べやすく(飲みやすく)、そしておいしく食べて(飲んで)いただくか?という内容で弊社所属の言語聴覚士高田が講演をしました。
前回講演した摂食・嚥下5期のお話を軽く交えながら、嚥下食とトロミについての内容を少しお伝えしたいと思います。
(前回の講演内容はこちら)
≫嚥下食とは?
嚥下食とは、口の中で噛みやすく、まとめやすいもの。また、口の中やのどに残りにくいもの、あるいは残ったものを流してくれるもの。誤嚥しにくいものを言います。
嚥下食では「食べる」「飲む」ことだけに重点をおきがちですが、そればかりではなく、食べる方の好物や見た目、香りなどを工夫し、脳を活性化することもとても重要です。
≫トロミについて
トロミ粉を何に混ぜるかによって分量は異なります。
牛乳などタンパク質を含む液体はとろみがつきにくく、とろみがつくまでに時間がかかります。説明等に記載されている分量にとらわれず、トロミ具合を目で見て確かめることも大切です。そしてさらに、ただトロミをつけるだけではなく、それを飲む時のことも考えなければいけません。
☆例えば、『脱水にならないよう、毎日お茶を1リットル飲んで下さい』と言われた時、常温のお茶にトロミを付けたものだけを1リットル飲むことを想像してみて下さい。
そして実際に、常温のお茶にトロミを付けたものを参加者の皆様に飲んでいただきましたが、「うーん…」と首をかしげている方がたくさんいらっしゃいました。
そこで、冷たいリンゴジュースにトロミをつけたものを飲んでいただいたところ、「これならいっぱい飲める」「おいしい」との声が上がっていました。
その方の症状や嗜好を掴んだ上で色々と組み合わせてみるのもいいのではないでしょうか?
また、在宅で過ごされている嚥下障害のある方やそのご家族の中には、退院時に提案された嚥下食メニューでなければならないと思われる方も多くおられますが、実はそうではありません。「今の状態」を知り、少しずつ工夫しながら「食べたいものを再び食べる」を目標に日々の食事も楽しまれてはいかがでしょうか?
≪第2部≫
第2部では、前回に引き続きご協力いただいた株式会社クリニコ様より、トロミ粉や栄養補助食品をご紹介いただきました。
誰でも簡単にトロミを付けられるものや、様々な味で毎日食べても飽きのこない栄養補助食品など美味しくて便利な商品を色々とご紹介いただき、大変参考になりました。
実際に、多く発売されているので、食べることや飲み込むこと、栄養面が気になる方は、一度、お試しされても良いかもしれません。
≪第3部≫
第3部では、京都訪問栄養士ネットの管理栄養士 樹山様と荊木様のお二人に「おいしいトロミ料理 ~嚥下食と高齢者の栄養~」についてご講演いただきました。
高齢になってくると、低栄養や脱水、サルコペニアなど健康面で様々な問題が起こってくる方も多い中、料理する方の負担が少なく、お家の味を活かして体に必要な栄養を摂りたい!という時、どうすれば良いのかを分かりやすくご紹介下さいました。
≫まずは好きな食べ物に”ちょい足し”
お粥は飲み込みやすい食べ物ですが、同じ量の白米と比べるとエネルギーやたんぱく質が半分以下しか取れません。
そこで、お粥に卵やほうれん草を足してみてはどうでしょうか?
パンがお好きな方は、パンを牛乳と卵に浸して焼いて、食べやすいフレンチトーストに。さらに牛乳で煮て作るパン粥もとてもおいしいそうです。
≫とろみをつける食材
日頃食べている食材にもとろみを付けて食べやすくしてくれるものがあります。
例えば…
・まとめて喉ごしを滑らかに・・・卵、ヨーグルト、生クリーム など
・粘りでまとめるたんぱく食品・・・魚のすり身、はんぺん、豆腐、ひき割り納豆 など
・野菜のネバネバ、もちもち・・・オクラ、山芋、里芋、かぼちゃ、アボカド など
・便利な調味料・・・マヨネーズ、練りごま、みそ、片栗粉、ゼラチン など
≫食べ物は見た目も大切
器を工夫したり、ペースト状にしたものを元の形に似せて成型したりと、ひと手間加えるだけで見た目も華やかになり、食欲が湧いてきます。嚥下食を作られている方は、このような事も参考にしていただけたらと思います。
また、栄養や嚥下食などについて気になる方は、居宅療養管理指導として管理栄養士も訪問できますので、主治医やケアマネジャーにご相談下さい。
そしてこの日は、サバ缶と山芋のペースト、野菜とはんぺんの煮物、ねぎとろ、かぼちゃのカスタード和えの4種を試食させていただきました。どれもしっかりとした味があり、舌触りも良く、とても美味しかったです。
今後も当訪問看護ステーションでは地域講座を開催する予定です。
皆様のお近くで開催することがありましたら、ぜひたくさんの方のご参加をお待ちしています。