ハートケアグループでは、毎年、大阪府地域福祉推進財団(愛称ファイン財団)の主催する『”エイジレス社会”海外福祉事情・調査研修』に参加しています。
昨年は、11日8日(日)~11月14日(土)にかけて、『福祉先進国デンマーク・フィンランドの高齢者ケア施策比較研修』に当社職員 紙屋、小谷、徳永、福井が参加しました。
1日目
関空からヘルシンキ・ヴァンター空港を経て、コペンハーゲン・カストラップ空港に到着。この日はホテル到着後、市内を散策しました。
写真
左上:デンマーク最大のデパート『マガシン』
左下:ニューハウンの街並み(アンデルセンも愛した港町でカラフルな建物が並んでいる)
右上:アマリエンボー宮殿 衛兵の交代式
右下:神話をモチーフとしたゲフィオンの噴水
2日目
デンマーク南東部の都市ネストヴェ市を訪問しました。ネストヴェ市は、高齢者福祉、障害者福祉、保育、教育、環境などあらゆる市民サービスに力を入れて発展してきた都市で、多くの視察団が訪問されています。
午前中は市役所にて福祉政策についてのレクチャーを受けました。
北欧諸国では、『ユニバーサル(普遍性)』という福祉理念のもと、社会福祉や保健サービスは誰でも公平に提供されるのが原則で、その財源も全て税金で賄われています(ちなみに税金は、収入の45%程度)。けれども少子高齢化による財源不足はどの国でも起きているようです。
また、地方分権化が進んでいるのもデンマークの福祉政策の特徴で、仕組み作りは国が担当。実際のサービスの実施(運用)等は、州や市町村に委ねられているとのことで、ご利用者のニーズに応じて、市の判断により実際のサービスの内容が決められ提供されており、日本でのケアマネジャー的役割を担っているようです。また、全国民にGP(家庭医・かかりつけ医)が配置されていたり、市の職員は部署に関係なく、高齢者・認知症関連の研修を受けており、認知症の方に優しい街づくりを目指しているとのことで、福祉先進国という印象通り、手厚い福祉政策であると感じました。
午後からは、ケア付き高齢者住宅『シンフォニー』を訪問・見学しました。
『シンフォニー』は、認知症ケアを特徴とし、認知症コーディネーターと呼ばれる専門職スタッフも勤務しています。施設では、入居者の個人史を尊重した生活を目指しており、入居が決まると、ご利用者の現在の生活を再現できるよう、認知症コーディネーターが家庭訪問を行ったり、入居後一週間以内に面談し、要望、期待する事を聞き取ったりされています。(その後ケアプランへ)。
実際にお住まいのご利用者の一室。家具など自宅の物を使用して、まるで本当のご自宅の一室のよう・・・
施設運営では、入居者協議会や家族会の意見なども取り入れられているということで、ご利用者の意向をできる限り尊重し、大切にされた施設である印象を強く受けました。
他には、外出イベントも豊富で、希望者にはキャンプも行われる等、認知症の方であっても個人の行動はできる限り尊重されているようです。(外出時はGPSをつけていただき、足跡をたどられています。)
また、自室で不穏になられるご利用者に、不安な気持ちを和らげていただけるような神秘的な共用スペースも用意されていて(写真下)、ふわふわで波のような特徴のある天井や中に蛍光色をちりばめているような透明の美しい筒状ケース。一見普通に見えるベッドも実は横になると振動が感じられる特殊なベッドだそうで、このスペースにセットされているものには全てに意味があるそうです。視覚、触角、聴覚など人間の感覚に刺激を与えることができ、ご利用者のメンタル面に働きかける独特のスペースでした。
3日目
3日目は、コペンハーゲン北西10キロにある老人ホーム『ボンデルップガード ナーシングセンター』を訪問。スタッフの説明を受けながら施設内を案内していただきました。
比較的軽度で、自立の方対象のホームのようで、アクティビティセンター(日本のデイサービスに該当するもの)を併設しており、日本のデイサービスと同じように、パソコンや脳トレ・手芸・工作・イベントや筋力トレーニングなどをされていて、活動の様子も見学させていただきました。また、アクティビティーセンタ?は、地域住民(65歳以上の方)も会員制にて利用でき、地域住民の方にも様々なカリキュラムを提供されています。
中庭には植物がたくさん植えられており、緑豊かで、アニマルセラピーとして施設内では犬・ウサギ・ニワトリ・オウム等たくさんの動物を飼われていて、ご利用者も可愛がられていました。
4日目・5日目
4日目には、コペンハーゲン(デンマーク)からフィンランドのヘルシンキに向けて出発。
午後からフィンランド社会保険庁事務所(ケラ)にて、フィンランドの社会保障について研修を受け、5日目には『プオティラ老人施設』を見学しました。
フィンランドの『プオティラ老人施設』でも、「在宅時と同じ生活を」をコンセプトに、アットホームな暮らしの提供を心掛けておられました。フィンランドのお国柄が感じ取れた光景としては、施設の各フロアにサウナが設置され、希望されるほぼすべての方がそのサウナを利用できるということがありました。まさに、施設であっても「在宅時と同じ生活を」楽しむことができ、サウナが有名なフィンランドならではの様子を見せていただくことができました。
またフィンランドの福祉政策の傾向として、在宅重視で施設は減ってきていることや、北欧全般の考え方として、総合病院では慢性疾患や療養的な入院、胃ろうなど、延命治療はあまり行われず、ありのままを受け入れる傾向にあるそうです。そうした背景によるものか『プオティラ老人施設』でも、入居者が使用している薬の見直しを行い(2011年)、服薬を最低限の内容に変更する試みをされたそうで(睡眠薬や精神安定剤等は使わない等)、それにより、副作用の影響が少なくなり、入居者が健康(元気)になったと言われていました。そして、職員にも薬についての知識・研修を行われているそうです。
6日目
6日目午前中は、ヘルシンキを自由行動。白い大聖堂等、ヘルシンキの素敵な建築物や彫刻、街並み等しばしの観光も満喫することができました。
今回、デンマーク・フィンランドの北欧2カ国の訪問で、北欧諸国の施設では、ご利用者の尊厳を最大限に尊重されている様子をうかがうことができました。また同時に、入居者各室の天井には天井走行型リフトを設置できるようにレールが引かれていたり、椅子の脚にキャスターを取りつけ、ご利用者の移動の際に、介護職員の負担軽減を工夫されていたり、施設の管理者や市役所・社会保険庁の職員の方々が介護職員の身体をとても大切にされている事も印象深く感じました。
7日間の短い期間でしたが、高齢者・障害者に優しい北欧での貴重な経験を、今後、それぞれの業務での参考にし、生かしていきたいと思います。