11月13日から11月19日までの7日間、大阪府地域福祉推進財団主催の”エイジレス社会”海外福祉事情・調査研修(スウェーデンの高齢者ケア比較研修)に当社職員が参加し、4日間で5箇所の施設を見学しました。
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ウプサラ大聖堂
【11月14日:ストックホルム】
●テラス・フリーティーズセンター
テラス・フリーティーズセンターは、高齢者向けのデイアクティビティーセンターです。高齢者の社会生活の向上を目的として、1974年に設立され、ストックホルム市の全ての年金生活者、障害のある方で年金対象者が利用することができます。レストラン、図書館、美容室を備えており、高齢者向けに音楽プログラムや展示会、映画鑑賞会、ヨガ、太極拳、体操などプログラムが設定されており、利用者数は、1日360名、年間約6万名。今のトレンドはヨガだそうです。利用料金は無料で、食事や美容室等の個人的なサービスは有料となっています。
見学したヨガのプログラムの先生は、なんと87歳の女性。スウェーデンでは年金は、人それぞれの働いた年数や、現役の時の収入などによるため、働ける方は生涯現役の方が多いようです。健康な高齢者の維持、孤立化させない、ソーシャルな関係を作ることが目的です。デイケアセンターに行くことにより、家庭介護が長く出来るメリットがあります。
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【11月15日:ソルナ】
●レハブ・ステーション
レハブ・ステーションは、障害者向けのリハビリテーション施設です。スポーツを取り入れたリハビリ・プログラムが特徴で、脳障害や脊髄損傷などによる障害者の方が社会復帰のためのリハビリに取り組んでいます。1987年に初めて脊髄損傷の患者のためのプログラムを導入して以来、リハビリ治療と医療を結ぶ全国的なネットワークを形成してきました。入院と通院があり、年間480名の患者をケアしています。
レハブ・ステーションでは、利用者のベストを出そうと、色々な分野の専門職のスタッフがチームとなって支援しています。専門職で構成されるチームは、医師・看護師・作業療法士・理学療法士・言語聴覚士・ソーシャルワーカー・ヘルスコーチ・リハビリインストラクター・レクリエーション・リーダー等で構成されています。スタッフは、障害を持っている方が多く、利用者の悩みに寄り添うことができ、機能が低下した状態であっても、役割を持ってやっています。メニューは多様で、スポーツ、プールテラピー、アウトドアトレーニング等があります。
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【11月15日:ハニンゲ】
●ハガゴーデン
1950年代に建設されたこの施設は、大規模な改修を行い、近代的な施設として生まれ変わりました。老人ホームとショートステイ用の住居、認知症老人用のグループホームだけでなく、リハビリテーション施設、デイセンターなども併設されている総合高齢者施設です。認知症老人用の「グループホーム」、ホーム内で医療・介護の受けられる「ナーシングホーム」などの各種高齢者用施設を持つ、総合高齢者施設といえます。
ハガゴーデンは、91名の方が居住、内、36名が65歳以上の身体障害者、55名が何らかの認知症症状がある方です。施設内には、厨房があり、地域の人にも開放されています。一度ハガゴーデンに来られた方は、他に移る事はなく、こちらが生涯を遂げる「マイホーム」になります。「マイホーム」での生活なので、犬や猫を飼ったり、家族が来て食事に行ったり、一緒に過ごすこともあります。歌やダンス、体操、詩の朗読、絵を描く、教会から説法をしに来てもらう等、利用者のニーズを中心にさまざまなアクティビティが行われています。
訪問時は、ちょうどお茶の時間で、利用者の皆さんがスタッフと一緒に共有のリビングスペースでお茶とお菓子を楽しんでおられました。のんびりとした有意義な時間が流れていると感じました。
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【11月16日:ウプサラ】
●エリクスダールガーデン
2001年に設立されたナーシングホームで、広大な庭に囲まれ、ジムやスパがあり、週単位でアクティビティが行われています。スタッフは、入居者に安全なケアを提供できる環境づくりを目指し、入居者の興味のあることを大切にしています。
エリクスダールガーデンでは、ドッグセラピーを行っており、12匹の犬と5人の犬療法士がいます。スウェーデンは科学的な国で、根拠がないと行わないし、使わない。と運営長の言葉が印象的でした。実際、ドックセラピーをすることで、利用者の薬の量を減らすことができたり、リハビリ時間の短縮につなげることができ、精神障害や自閉症患者の方が社会復帰をすることができているとのことでした。
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【11月17日:ソルナ】
●ベルガ老人センター
1962年創立の高齢者の為のサービスハウスで、現在96名の高齢者が入居しており、スタッフが24時間体制でケアにあたっています。医師が定期的に訪問し、作業療法士、理学療法士も勤務しています。このようなサービスハウスがスウェーデンには12箇所あります。スウェーデンでは、移民が流入し、その中には戦争を体験した心の痛みをかかえている人もいます。イスラエルの医療社会学者アーロン・アントノフスキーによって提唱された健康生成論が定義となり、それぞれのサービスハウスによって、「美術」「文化」「音楽」の3本柱の内のひとつをテーマにすることを特徴としており、ベルガ老人センターは、「美術」をテーマにしています。
「芸術は、工程や段階、過程が大事、結果重視ではない。人によってプロセスが違うので、プロセスを大事に、その方が理解できるようにします。その人にとって今日一日が意味がある、楽しいという事を重視している」というセンター長の言葉が心に残りました。その他、玄関を入った所には、芸術家の作品を5週間ごとに展示し、その芸術家に来てもらい話を聞く機会を設けています。「美術」をテーマにして考えることで、介護や病気と離れられ、発想の転換ができます。
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<取り組み紹介「記憶と出会おう」>
■認知症の女性の場合(写真左):その女性が子ども時代に住んでいた家の絵を四季折々の風景で、何枚も何枚も描き、女性は、言葉に出せないことを絵に描いて表現した。
■孤立した男性の場合(写真右):誰も寄せ付けなかったが、自分のコレクションの切手を使って絵を描いた。そして、その切手一枚一枚のヒストリーを話した。
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■スウェーデンでは、高齢者は独居や夫婦で住むのが普通で、2世代、3世代同居はなく、子どもは老人と接する事が少ない。交流の機会を持つため、指人形を使った交流を行った。指人形は、理容師をやっていた利用者が昔店に来ていたお客を思い出しながら製作した。
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スウェーデンでは、「施設と言う言葉は使いません、あくまでもホームです。自分の終の棲家、家なのです」と何度も強調されていました。実際に入居されているお部屋を訪問させていただきました。自分の元の家から何を持ってくるか、皆さんかなり悩み、選んで家具等を持って来られるそうです。無機質なものはなにもない、自分のものに囲まれた、とても温かい場所でした。
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スウェーデンでは、93%の高齢者の方が在宅生活を続けていると言われています。しかし介護が必要になった時、自分の終の棲家と思える「ホーム」で過ごせることは、願ってもないことだと思いました。
高福祉の国、スウェーデンの介護事情の一端を見学、勉強させていただいたこと、そして美しい国、スウェーデンに行く機会をいただき、経験させていただいたことに感謝します。実際に行って見て肌で感じることができた、実りのある研修だったことを報告します。

ハートケア藤井寺事業所 小森飛鶴

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ストックホルムのお菓子屋さん
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ソルナ市の町並み
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ストックホルム「魔女の宅急便」のモデルになったとされる夜の風景
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セーデルマルム島からガムラ・スタンを望む