本人像 70代 男性 認知症
利用までの経緯
夫婦二人暮らしで、本人は高齢により身体機能低下、特に下肢筋力低下が著しく、歩行不安定で立ち座り、起居動作も困難で転倒の危険がある。また、認知症の進行により、聞いた話、言った事、直前の物事も忘れるようになる。尿意、便意の訴えも少なく、オムツを使用している。さらに生活リズムの昼夜逆転があり、夜間に居室内を歩きだすなど転倒の危険があり、介護している妻も高齢のため、不安を感じてホームに入居を希望する。
援助の方針と働きかけ
日常の衣食住を含めた生活自体を快適にする。早食いの傾向があるので、食事介助の際はムセに注意し、日常生活動作の見守りを強化する。本人は口数が少ないため声かけをし、傾聴の姿勢で気持ちを引き出してコミュニケーションをとり、信頼関係をつくる。認知症のため不安になりやすいので、精神的なサポートも心がける。
日常生活動作(ADL)の向上を目指して
カラオケ大会や季節の行事など賑やかで楽しい催しが好きな方なので、ホームのレクレーションなどに参加して楽しんでもらうことで、意欲向上が見られて心身ともに元気になった。理学療法士(PT)から機能向上訓練をうけるようにしたところ、車いすからの立ち上がりや歩行もできるようになった。そして、スタッフが根気よく見守りながら自力でできるように促すことで、起き上がりも辛うじて自分でできるようになった。また、当初は、尿意や便意の訴えが少ないためにオムツを使用していたが、スタッフが定期的に誘導することによりトイレでの排泄が可能になり、現在はオムツの使用を止めている。食事については、自分で食事ができるようにお粥ときざみ食を準備し、すくいの部分が小さく柄は太いスプーンを使用して早食いによるムセや誤嚥が起こりにくいように配慮した。
利用者・家族の声
妻の声:入居前とはまったく違い、自分でできることが増えて、夫は元気になってくれました。表情も良くなり、私が訪問した時に笑顔をむけてくれるようになりとても嬉しいです。スタッフの方も良い方ばかりで感謝しています。
結果とまとめ
車椅子から立ち上がりや伝い歩きができるようになるなど、入居してから自分でできることが増え、職員や他の入居者、デイの利用者などとの交流を通して日常生活に楽しみや意欲が生まれ、素敵な笑顔がみられるようになった。その笑顔は見る人の心を和ませるほど魅力的で、ホームの人気者になっている。本事例は、理学療法士の訓練や「できることは本人に」をモットーにしたスタッフの介護が実を結び、日常生活においてできることが増えたことで本人にとって生きがいのある豊かな生活が送れるようになった事例であると言える。