事例
本人像:40代男性 要介護2/脳梗塞
(サービスに至る経緯)
右手の指先に痺れを感じたがそのまま就寝。2時間ほど経って目が覚めた時には身体の右側が動かすことができず、救急搬送され入院となった。3ヵ月後、病院でのリハビリが終了となり退院。職場復帰に際して不安を感じていたが「自宅でリハビリができるサービスがある」と聞き、ケアマネジャーを通して訪問リハビリの依頼があった。
(開始時の状況)
・日常生活動作では入浴で一部介助が必要であるが自立に近い状態。
・歩行は可能であるが麻痺側(右側)に体重をかけることが不安である。
・屋外でも平らな道での歩行は比較的安定しているが段差などのある整備されていない道路での歩行は不安定である。
(解決すべき課題)
・職場復帰に伴い、安定した歩行で通勤ができるようになる。
・実際に通勤し、社会環境の確認、危険予測、リスク管理・リスク回避ができるようになる。
(リハビリ目標)
短期目標:実用性のある安定した屋外歩行ができるようになる。
長期目標:職場までの通勤が安全にできるようになる。
(リハビリ内容)
屋外歩行の自立を主目的として週2回、訪問リハビリを実施する。
・麻痺側への荷重や重心移動を意識したバランス訓練
・段差や坂道など、様々な状況下での歩行訓練
・リスク管理についての説明
ヒント
(リハビリ開始から12ヵ月後 現在の状況)
・整備されていない道路やエレベーター、段差や悪天候など、様々な屋外での状況下でも歩行が可能となった。
・現在は職場復帰し、転倒することなく安全に通勤できている為、訪問リハビリは終了となった。
(利用者・家族の声)
利用者:「安定して歩けるようになったおかげで職場に復帰できて本当に良かった。当たり前にできていた『歩く』ということがこんなに難しくてありがたいことなんだと身にしみて感じたよ。」
妻の声:「退院してどうなるか不安でしたが、仕事に行けるまでになって本当に良かったです。」
(まとめ)
このケースは屋外歩行できる能力があっても実生活の環境では活かしきれない状態であった。「屋外を自立して歩行できる」ということと「実際に通勤できる歩行」ということは違い、屋外を歩けるからといって通勤できるとは限らない。実際の生活の中で外を歩く時は、雨の日には傘を差し、出勤する時は荷物を持って歩く。駅に行けば多くの人の流れがあり、自転車や自動車の往来もあれば、平坦でない道のほうが多い。
これらのことを踏まえた上で、病院で獲得した歩行能力を実際の生活で活かし、様々な環境を想定して適応できるようなリハビリプログラムを立案し、実施したことで職場復帰をいう目標の達成につながったと言えるのではと考えている。