本人像:80代女性、要介護2/若年性アルツハイマー病 右股関節骨折
利用までの経緯
本人は若年性アルツハイマーで、食事のコントロールができず夜中でも目が覚めたら食事をとっていた。身体面では特に疾患はなく、日常生活はすべて自分で家事を行っていたが、お金を持つと煙草やお酒を買ってしまうし、洗剤の箱(1キロ)が2日でなくなったり、磨き粉が1日でなくなったり、おかしな言動も見られるようになってきていた。そのため近所に住んでいる息子の介護負担も増え、ヘルパーサービスの導入となる。
援助方針と働きかけ
炊飯は自分でできるので、ご飯だけはきちんと食べていたが、おかずがなかったり、夜中でもご飯を食べていたりで偏った食生活と食べ過ぎの状態にあり、ズボンが入らないほどお腹が出ていた。そのため、生活習慣病も心配されるので、まずはヘルパーが一緒に調理を行いながら栄養的に偏りのない規則正しい食生活を促す。また、自分では煙草やお酒ばかり買ってしまうので、ヘルパーと一緒に買い物をすることで必要なものが購入できるようにし、独居生活を支援する。
食事コントロールの取り組み
まず、ケアマネージャー、ヘルパー、本人、長男夫婦が参加してサービス担当者会議を開き、認知症で独居の利用者をどのように支援していくべきかを検討した。1日に3合もお米を食べていたので、サービス担当者会議では、お米を家に置かずに事務所で管理し、ヘルパーが必要な量だけ(1日2合ずつ)訪問の際に持ち込んで炊飯するよう取り決め、ご飯の量を制限することにした。また、本人にお金を持たせると煙草やお酒に使ってしまうのでお金も一切家には置かず、お酒や間食などができない環境を整えた。
ヘルパーは、毎日お昼前に(通所利用日の週2回は夕方)に訪問し、本人と一緒に決められた現金だけを持ってその日の買い物に行った。献立は本人が考え、調理も自分でできるので、ヘルパーは決められた金額内で購入できるようにだけ配慮し、本人の主体性を尊重しながら見守り中心に補助する方法で支援をした。本人が一人で調理していた時には、お鍋を火にかけたままで消し忘れて焦がしてしまう事もあったが、ヘルパーが補助するようになってからはその心配がなくなった。また料理のレパートリーも増え、栄養的にも偏っていた食事が少し改善できた。食事制限については、本人も腹回りが出ていることを自覚していたので、素直に理解し特に問題もなくスムーズに取り組めた。
利用者・家族の声
利用者: お腹がへこみ、散歩が楽になった。
家族 : 成人病の心配も少し減り、元気に歩いている姿を見て安心しました。ヘルパーさんに来ていただいて良かったです。
結果とまとめ
白米は毎日2合のみに制限し、お酒や間食できる食料も必要以上には家に置かない環境にすることにより、毎月1kg近く体重が減り、お腹もへこみ、最終的には5kg減のダイエットに成功した。ヘルパーと一緒に食事を作ることで、以前の偏った食事からずいぶん食事内容(栄養状態)も良くなった。1日1回のヘルパーの訪問であるが、その力は大きく本人の食事環境や生活状況に良い影響が表れた事例と言える。また、ヘルパーが1日1回訪問することで健康状態や生活の様子も観察でき、また、家族(長男の妻)とこまめに連絡を取ることで、トイレットペーパーなどの日用品の補給について家族の協力も得られた。こうして、ヘルパー・家族・デイサービスが関わることにより、健康管理を含め本人の元気な独居生活の維持を支援できたといえる。