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タイトル
マーク 2013.04.26 line 有料老人ホーム(成功事例):活動意欲を引き出し、身体機能の向上へ

本人像:80代 女性 要介護3/被爆以後体調不良、両下肢筋力低下、歩行困難


利用までの経緯

2人暮らしをしていた夫が入院。本人は手押し車で歩行していたが、尻もちをついたり、バスに乗るときに転倒したりとだんだん下肢筋力が低下し、手押し車での歩行も困難となる。夫は退院後一応自宅治療となるが歩行ができず、訪問介護サービスを利用する。ヘルパーが家庭を訪問すると薬の管理ができておらず、薬の量が多いようなので長男は薬依存症があるのではないかと心配している。排泄、移乗、食事作りの訪問介護サービスを続けていたが、長男夫婦は遠方から通っての世話はできず、夫の死亡後、当ホーム入居となる。入居時は寝たきり状態で寝返りも1人ではできず介助が必要な状態であった。


援助の方針と働きかけ

 夫の死後、精神的にも落ち込み、悲観的になっていて何事にも意欲がなく、すべてにおいて諦めが先にたっていた。常に声かけをし、傾聴し、コミュニケーションをとり、少しずつ気力を取り戻してもらうようにする。 加齢とともに判断力・理解力が低下し、日常生活全般において見守りと声かけが必要である。声かけをして本人の意思を尊重し、自立している機能を意識したケアを行い、楽しみを見出してもらい、安全で安心して楽しく過ごせるように支援していく。


服薬管理

ホームへ入居した頃は、投薬量も多く(薬への依存傾向があり、10種類以上服用していた)、体調を崩し臥床状態で寝返りをすることもままならなかったので、まず、ホームの主治医に相談し、適切な投薬量に変更してもらった。職員は、体調の不調の訴えに耳を傾け、医師と連携し、安心感を持ってもらうようにした。


離床から意欲と楽しみの喚起へ

入居時は寝たきり状態、ベッド上でスタッフに横を向かせてもらったり、上を向かせてもらったりしていた。食事も排せつもベッド上で全介助を行っていた。常に声かけし、気力を取り戻してもらえるように働きかけ、気分転換をしてもらえるように他の入居者との交流を促すうちに本人の意識に変化が生じてきた。同じようにハンディのある入居者とお話をしたり様子を見たりして「自分も頑張らねば」と前向きに考えられるようになってきた。そこで、体調を見てスタッフが「少し車いすに座ってみんなのところに行きましょうか」と誘い、食事の時も「みんなと一緒に食べたら楽しいよ」と声かけして離床を促し、生活にリズムをつけるようにした。本人の状況の変化と今後の方針を常に話し合い、統一した介護を行うように努めた。本人の意思を第一に尊重しながら、興味や楽しみを持ってもらえることを探して勧めた。何かできるようになったら、スタッフやほかの入居者が上手く褒めるとますますやる気になってくれた。

 離床時間も長くなり、元気になってきたので、気分転換と外出する楽しみを持ってもらうため、通所介護を週に1回利用した。レクリエーション、趣味活動に参加し笑顔が多く見受けられるようになってきた。しかし、車いすに座って過ごす時間が長くなると、臀部に圧力がかかって褥瘡ができてしまい、日中車いすに座っていることが困難となった。横になってもらう時間を増やし、褥瘡部分を薬で治療した。(褥瘡の治療はそのケースによっては医師の指導に従うことにしている)今では、褥瘡も完治し、自走式車いすで移動して生活している。もともと筆まめな方なので手紙を知人などに出すように促したところ、現在では週に1~2回手紙のやりとりを楽しんでいる。また、ホーム内のお花見などの行事に参加し、ホームでの毎日を楽しくすごすことができている。


結果とまとめ

 夫の死後精神的に落ち込み、下肢筋力低下と意欲低下が著しく、寝返りもすることができない。寝たきり状態になるとすべてにおいて諦めが先に立つようになっていた。日々、職員が本人の訴えに耳を傾け献身的に対応してコミュニケーションをとることで、信頼関係を築くことができた。そして、少しずつ前向きに考えられるようになっていき、趣味の水墨画、知人との手紙のやり取りなど自発的にやりたい活動を見出せたことで、意欲が引き出され、臥床中心の生活から車いすの自走へと身体機能面も向上した。入居時とは別人のように活動的になり、生活リズムが安定して毎日を楽しく過ごせるようになっている。現在では、洗面所、トイレなどホーム内は車いすで自走し、洗面、排泄、着替えなども自分でできるようになった。自力歩行は機能的には難しいが、本人は「もう一度歩きたい」という前向きな思いも抱いている。意欲を引き出すことが身体面に非常に良い効果を及ぼすことを実感した事例である。


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